毎年同窓会総会の頃は中庭の藤の花が盛りです。薄紫と白の美しい花は、ほのかな香りを漂わせて私たちを楽しませてくれます。この藤の木は捜真女学校創立当初からずっと度重なる移植に耐え、生き続けてきたものです。山手34番地時代に裏門にあった藤棚は、中丸の丘へ一緒に引っ越して来ました。その後昭和12年にカンヴァース記念講堂が建設されるにつき、下の校庭の隅に移されました。そのために戦火にも焼失を免れ、戦後の木造校舎時代は再びグラウンドを見下ろす場所に植えられました。
この藤棚の下は、楽しい語らいやさまざまな集会の場所として、また運動会などでは本部、放送席になるなど、花壇とともに中庭の主役でした。現在のチャペルができるに際し、バス通りに面した正面脇に移されましたが、排気ガスの影響で一時は瀕死の状態でした。今は3号館前にしっかりと根を下ろし、中庭の芝生に美しく調和しています。四方に伸びたその枝の下に若い人々を憩わせる情景は、その昔、私たちがここに学んだ日々のことを、それぞれの胸によみがえらせてくれます。捜真の歴史と共に樹齢を重ねた中庭の主役は、これからも母校のあゆみを見つめつつ、訪れる人々に歴史を語りかけていくことでしょう。