捜真ノート

母校に対して誇りに思っていることや、同窓生の経験を分かち合うページです。

ストックホルムの身近な自然と社会1

 自分の生き方への長い挑戦の話を飛行機で隣席のフィンランド男性から聞いたのは、自立した女性の人生と程遠いようなインドで留学生をしていた時。それがきっかけで、その男性と家族を築くことになったのは神様のいたずらかもしれない。北欧社会の知識などないまま、ストックホルムに住む彼と新しい生き方に挑戦したいと思って入ったスウェーデン社会は、自分を問われる場でもあった。一体あなたは何ができるのか、何をしたいのか? 

 自分の道探しは、先ずは社会に入る鍵となるスウェーデン語を身に付けることから始まったが、生活のために必要な勉強はほとんど無料で行え、勉強の成果と仕事が直結しているのを感じ、すんなり税金で形作られる生涯学習社会へ参加していった。居住権を持つ市民であれば教育が無償で受けられ、立ち止まり生き方を考えられる学びの場の選択肢があるのは、やる気をサポートしてくれる。とはいえ、生活を維持しながらの厳しい勉強の道は、長期計画が必要。 そして子どもの有無にかかわらず社会に居場所を持つスウェーデンでも、女性にとって育児・家事の比重は重く、パートナーとの協働が重要になる。

 そんな新たな社会の仕組みの中、自分の人生設計の舵取りにしたのは、日本で大学・余暇を通じて培った自然保護協会とYMCAの経験から得た、自然と人間のかかわりに興味を持ち、屋外で活動するという視点だった。仕事とは別に、すぐに日本と同じような活動をしているスウェーデン自然保護協会と野外活動推進協会という団体に所属し、家族、仕事、余暇の3足の草鞋を履くようになった。今では教育の場での仕事から離れ、ストックホルム周辺に住む日本語を話す家族の人々に、身近な自然にある宝物のような環境を案内しながら、遊びから学びに繋がるような屋外教育を提供する「森であそぼう」という活動を主宰している。

 6月の初旬辺りからの約2か月間の夏休みは、朝5時から夜の9時くらいまでは同じような明るさで歩き回れ、湿気も無く暑さも25度前後という最高の季節。 その時には「森であそぼう」の活動も活発化しそうなものだが、実は多くの家族は長い夏休みを利用した日本帰国、田舎の別荘滞在と生活・仕事の場所から離れることが多く、私は自分自身のフィールドワークや研修に時間を費やす。
このような家族の動き方ができるのも、年間25日(5週間)の休暇を取ることが法律で保障されているからだ。日差しが長い夏季に1か月前後の休みを取り、生活にメリハリがつき「また頑張ろう!」に繋がる。

 こうした社会の仕組みも、多様な生き方を認め合おうと、人々が試行錯誤で作り上げてきた。その中心にある、より良い自分の人生への思いは、どの社会でも同じように思える。次回以降は、休みの在り方、身近な自然との付き合い方などを紹介したい。

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